■木造耐火建築

先日、NPO法人まちづくりトライアングル主催の、まちづくり特別講演会「都市の風景・街のディテール」に行ってきた。

… →

講師は、建築家で秋田美術大学准教授の、小杉栄次郎氏。

 

小杉さんは、秋田で大学の先生をしながら、東京でKUSという設計事務所を構える二足のわらじを履くお方。

一昨年の「市街地木質化実証モデル事業」および「ティンバライズ秋田展」でとてもお世話になった。

秋田に来てまだ3年程とのことだけど、30年以上住んでる自分より秋田に詳しいんじゃないかというくらい、精力的に活動されていて人脈も広い。

・・・自分は何をしているんだろう。。。

 

とにかくその小杉さんが都市について講演するというので、大変興味深く、聞きにいった次第。

序盤は、磯崎アトリエに勤務中に担当した設計物件などの紹介からはじまる。

そして話は、自身が設計された「下馬の集合住宅」へ。

 

「下馬」は、世田谷区に建つ木造5階建てのマンション。

10年以上もの歳月をかけて完成したという。

というのも、「耐火建築物」で「木造」は、現行の建築基準法では、極めて困難な選択だからだ。

普通、耐火建築物が要求される場合には、設計者は迷わずRC造か鉄骨造を選択する。

しかしKUSは、施主が望まれたこともあり、柱や床などの構造部材を開発し、耐火実験・性能試験を行ない、1時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得し、この建築を実現させた。

とんでもない労力と時間がかかっている。

 

でもそのおかげで、木造耐火建築物が不可能ではないことを世に知らしめた。

ちょっと昔だったら法的に不可能だった。

2000年に改正された建築基準法で、性能規定で構造を評価する仕組みに変わり、大規模建築であっても「木造」が選択肢のひとつとしてあげられるようになったのだ。

要するに、大丈夫だと証明できれば何で作っても良いよ、ということ。

 

とはいえ、実際に木造耐火を実現するには、クリアしなければいけない課題は他の素材よりはるかに多い。

住宅程度だったら木造のほうが当然安くつくけれど、ビルを建てるとなると話は別。

建設コストも、木材利用促進の補助金等を駆使してやっと鉄骨造と同じくらいらしい。

つまり高い。

 

では、そこまでして、なぜ木造なのか。

木造のビルを建てるには、そのへんのロジックが必要になってくる。

 

そこで、今回講演のテーマである「都市の風景」というのがひとつのキーワードとなるはずだ。

コストとか趣味嗜好とか個人的な事情を超えて、都市に寄与する、公共的・集団的なロジック。

経済性に従うだけが都市の文化ではないと思う。

 

みんなで自分の住むまちのことを考えて、そこにお金を出す。

小杉さんが理事を務める「team Timberize」は「都市木造」というビジョンを提唱しているが、木造はあくまで選択肢のひとつ。

都市にとって、風景にとって何が良いのかじっくり考えて、建てる。

それを都市の知性というのかもしれない。

 

最近では、どんどん状況が活発化していて、メーカーや林業関係者はこぞって構法や素材を開発し、「都市部に建つ木造耐火建築物」が一般化に向かっている。

それはおそらくコスト面でも需要があるからだろうけど。

一般化すれば、小規模建築同様に、鉄骨よりも安く建てられるから。

でもそうなれば、ますます選択肢としての条件はフラットになる。

設計者としては歓迎すべき状況。

 

ちなみに、講演が行われた遊学舎も、木造大架構の構造だった。

初めて入った。

会場は満席。ちょっと遅刻してしまったのでいちばん後ろの席。。。

まちづくり講演会

← …